7%の紙一重(7): コーチのチカラ
こうしてドワイヤー率いるワラビーズは、頂点の座を掴んだ。徹底した勝利への準備と、その遂行。この時の彼らを「勝つべくして勝った」と表現することは容易い。
しかし、何しろ世界最高峰のネイション同士が、威信をかけて激突する祭典である。殊にアイルランド戦以降の3試合は、オーストラリアにしてもまさに「紙一重」の差をモノにしたと言えるだろう。この僅かな差が、果たしてどこから来たのか。
後から理由を探すことは簡単だが、それでも自分はコーチングに勝因を求めたくなる誘惑に抗えない。 (続きを読む…)
7%の紙一重(6): 魔物の牙
「正直なところ、楽勝だと思っていたよ。」
歓喜よりも、疲労困憊といった顔で会見場に現れたドワイヤーは語った。
「その油断と勘違いのツケは、取り返しのつかない大きさになるところだった。」
未だに語り草となっている、91年ワールドカップ準々決勝、ダブリンでのアイルランドとの一戦を終えた後のことである。
この試合で奇蹟的な逆転勝利をもたらしたものこそが、ドワイヤーが地道に積み上げてきた準備の成果に他ならないだろう。 (続きを読む…)
7%の紙一重(5): 12ヶ月後への祝杯
こうしたドワイヤーのビジョンの下、チームは賜杯に向けて着々と準備を重ねていった。それは選手たちにとって、自信を深めていく作業でもあった。
前述したオールブラックス戦の勝利後、チームは短いオフに入っていた。成長してきた若手が必要なポジションを埋めはじめ、チーム力は着実に増してきている。選手たちは翌年に迫ったワールドカップに向けて、最後の英気を思い思いに養っていた。
そんなある日、ワラビーズのキャプテン、ニック・ファージョーンズは、旅行先のホテルで部屋の電話が鳴るのを聴いた。 (続きを読む…)
7%の紙一重(4): クリティカル・ノンエッセンシャル
ドワイヤーの理念の中の重要な要素として挙げられるのが「クリティカル・ノンエッセンシャル」という考え方であった。
そのまま訳せば「必要不可欠ではないが、極めて重要なもの」であろうか。
ラグビーで勝利するために必要な、極めて本質的なもの…たとえばパワーやスピードといったフィジカルの強さ、あるいはスキルやテクニック、戦術などは、直接的に必要な「エッセンス」である。では、「クリティカル」で「ノンエッセンシャル」なものとは、一体何であろうか。 (続きを読む…)
7%の紙一重(3): 至聖三闘球士
ドワイヤーの理念からすれば、各選手に必要な要素はシンプルに3つであった。スピード、パワー、戦術理解。彼の理想は、これらを備えた選手を各ポジションに配置することであった。
若く可能性のある原石を選び出し、磨き上げた、ドワイヤーとAISの方針は奏効し、幾多の名選手がこの時期に花開いていくことになる。しかし、チームには勢いだけでないしっかりとした支柱が必要である。幸いなことにこの時、ワラビーズは3名の突出した選手を擁していた。豪州ファンから “Holy Trinity” と讃えられる、逞しい3本の柱が。 (続きを読む…)
7%の紙一重(2): 選ばれし45名
ドワイヤーの強化方針の根底は、個々の優れた選手たちの能力の総和が、チームとしての総合力を高めるというものだった。1+1を3にするのではなく、それぞれが2になり3になれば、自然と合計値は大きくなるという計算である。
そのために、ドワイヤーは強化対象選手を就任早々に45名に絞った。最終的にワールドカップへ登録できるメンバーは36名。彼らには徹底的なフィジカル強化と、基礎スキルの向上が課される。
選ばれし精鋭を鍛え上げることが、ドワイヤーの選んだ方法であった。 (続きを読む…)
7%の紙一重(1): 鉄条網の教え
1991年に行われた第2回ラグビーワールドカップの栄冠は、オーストラリアの頭上に輝いた。
アイルランドとの歴史に残る死闘を制し、前回王者オールブラックスを斃し、ホスト国イングランドを下しての堂々たる優勝である。
晴れやかな顔でエリス杯を掲げるファージョーンズに拍手を贈るボブ・ドワイヤーは、万感の想いでここまでの道のりを振り返っていた。一歩一歩積み上げてきた、3年半の途を。 (続きを読む…)









