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フィジアンは飛ぶか(4): 革命よりラグビー

フィジーという国は先住民族のものだとして格差政策を押し進めるガラセ政権と、偏向思想の是正を求めるバイニマラマ軍指令の確執は深刻の度合いを深めていく。それは最早、一触即発とも言える状態であった。

彼らの反発の根本は、2000年のクーデターに対する思想的な是否であるとも言える。フィジー系民族に有利な政策、クーデター実行犯の恩赦を認めさせようとするガラセ政権のやり方は、あたかもあのクーデターを合法的に成し遂げようとするかのような行為である。そして、あの動乱を合法的に鎮圧したバイニマラマが、今回はそれを非合法な立場で行おうとしているのだ。

ニュージーランド会談

両者の緊張が一気に高まったのは、2006年11月26日のことである。プライベートでニュージーランドを旅行中だったバイニマラマの元に、フィジー警察が彼を煽動罪で告訴する動きを見せていると連絡が入る。当然、政府の指示によるものである。彼は即座に陸軍へ電話を入れると、予備兵1,000人を動かして政府を制圧する準備をするよう指示を出した。

これに対して、以前よりフィジー情勢を気にしていたニュージーランド政府は逆に好機であると見て、首都ウェリントンで両者の会談を提案する。これを受けてガラセは28日にニュージーランドを訪れ、はからずも中立地帯でのミーティングが実現することとなる。

会談前夜、バイニマラマはメディアに対して次のように話している。

『とても単純な話だ。彼(ガラセ)は、我々の要求に対して”イエス”か”ノー”かを答えればいい。それで終わりだ。何か問題を話し合おうとしても、無駄なことだ。このミーティングは、彼が人生で参加した最も短いものになるだろうよ。』

しかし会談は2時間に及んだ。なんとか妥協点を探そうとするガラセに対して、バイニマラマは強硬に要求を突きつける。結局この場では結論には到らず、ガラセがバイニマラマの要求を検討するという約束で二人は帰国する。

最後通牒

11月30日、ガラセはバイニマラマの要求を部分的に受け入れることを発表する。それは、簡単に書けば次のような内容であった。

* 特に不平等と指摘された3つの法案について、さしあたり施行を停止する。そして特別委員会によりそれらを精査し、違憲であることが確認されれば、これを廃止する。

* 2000年のクーデターが非合法であったことを公式に認める。

* 軍のリーダー(バイニマラマ)に対して煽動罪での告訴を行わない。

* 警察長ヒューズの更迭。

しかしこれは、心情的にはとにかく政権運営としては何も変えないに等しい内容である。バイニマラマは不服として、翌日の正午を期限に全ての要求を呑むか否かを明確にするようガラセに要求した。要求を否定するか、あるいは回答が無ければ「浄化作戦」を決行する…つまり、実力行使に出るという最後通牒である。

革命よりラグビー

ところが、この翌日にあたる12月1日は「スクナ・ボウル」の日であった。年に1度、警察と軍の代表がラグビーで対戦する伝統的なイベントである。

もとより現在バイニマラマの告訴を巡って一触即発の警察と軍であるが、普段からして何かと張り合う仇敵の間柄であった。スクナ・ボウルは、そんな彼らの緊張を放出させるガス抜きのような役割も果たしている。両チームの真剣勝負は、国民も楽しみにしている行事であった。

この日、ガラセ首相と閣僚の何人かは、軍の「浄化作戦」を恐れて身を隠していた。警察長ヒューズは辞任の意向を否定しつつも、故郷のケアンズに退去しており戻ることは無いだろうと噂されている。いわば警察側のトップが軒並み不在となってしまった運命の日、このスクナ・ボウルは、なんと予定通りに行われた。

観客席にはリラックスした雰囲気のバイニマラマが座り、彼の部下達が警察代表を24-16で下すのを祝福していた。その姿は、既にこの騒動の勝者が誰なのかを物語っているようであった。

下の漫画は、12月3日のフィジータイムズに掲載されたものだ。

泣きながら走ってくる男が『大変だ!軍隊が動き出したってよ!どうしよう?』と叫んでいる。しかし彼の友人は『落ち着けよ!まずはラグビー、クーデターは後!!』と諭している。ナウパブリックのエドモンド・ジェンクス記者は記事で「こんな風に軍事革命が行われるのは、フィジーだけだろう。何もかもが、すんなりとは行かないんだ。」と冗談めかして書いている。

バイニマラマはインタビューに答え、政府に与えた回答期限を延長したわけではないことを強調した。つまり既に決断はされ、後は実力行使のタイミングだけになったという意味だ。

クーデターは、決して回避されたわけではない。しかし、この12月1日という日に、当事者である軍と警察によって例年通りのイベントが行われたことは、緊張を強いられてきたフィジー国民に、ほんの少しの安堵を与えてくれたのではないだろうか。
(最終話「革命の是非」に続く)

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-- Posted by nao58

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