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[ラグビー関連映画] マーダーボール

ラグビー…とは言っても、「車椅子ラグビー」。元来は「マーダーボール(殺人ボール)」と呼ばれていた、アルミで作った装甲車のような車椅子をぶつけ合う過激なスポーツに命を賭ける男たちのドキュメンタリー映画です。2005年に公開されました。

積年のライバルであるアメリカとカナダの戦いを中心に、障害を背負って戦う多くの選手達を追いかけています。障害を背負ってしまった理由も、立ち向かい方も、その状態もそれぞれの彼ら。それらが共に戦っていく硬派な部分だけでなく、家族や友人、性生活なども含めたプライベートな部分にも触れられています。ドキュメンタリー特有の堅苦しさや単調さを感じさせない良作です。

車椅子ラグビー(Wheelchair Rugby)の衝撃

試合の場面は、想像以上の大迫力です。
「車椅子」という言葉からイメージされる体を保護・補助するための優しい雰囲気は全く無く、鈍く光り、猛スピードでぶつかり合い、相手を跳ね飛ばすそれはまさに「凶器」です。本来「壊れ物のように大切に扱われるべき」(と自分などは思い込んでいる)障害者が乱暴になぎ倒され、転げる様は、自分の無知から来る狭い常識に囚われた偏見が壊されるような衝撃を受けます。

そしてなにより異質なのは「音」です。ラグビーにあるギッシリと詰まった肉がぶつかり合い骨が軋む音とは異なり、車椅子が衝突する硬質な衝撃音は心臓に突き刺さります。その激突音を一聴しただけで、このスポーツがいかに殺人的なものであるかを実感することが出来ます。

ところで、果たしてこれは「ラグビー」でしょうか。映画中でも簡単なルール説明がありますが、ラグビーらしいところは実際問題皆無です。なにより特徴的であるはずのボールは楕円ではなく球形ですし、前方にパスをしても良い、タッチダウンは無い、H型のゴールも無い、ユニフォームはバスケットボールのようです。しかしでは、これは何かと問われれば、やはり不思議と「車椅子ラグビー」としか言い表せません。もしかするとラグビーをラグビーたらしめているのは楕円型のボールなどの形状的なものではなく、ハードコンタクトによりボールを前へ前へと運んでいくスピリッツにあるのかもしれません。

熱い男たち

多くの選手やその周辺の人々が登場しますが、特に軸となるのはマーク・ズパン、ジョー・ソアーズ、キース・キャビルの3人です。

荒れた生活の中で交通事故に遭い、四肢を麻痺してしまったズパン。彼はマーダーボールと出会い、持ち前の攻撃性を昇華させる場を得ました。アメリカチームのキャプテンになり、中心選手として世界最強の座を死守すべく奮闘します。しかし彼は、事故の原因となった親友との間に葛藤を抱えていました。

ジョー・ソアーズは、かつてのアメリカのスター選手。しかし、選手としてのピークを過ぎた彼は代表から外されてしまいます。それに激昂した彼は、米国を後にして宿敵カナダの監督に就任してしまいました。打倒アメリカに執念を燃やす彼を、かつての後輩たちは「裏切り者」とそしり、敵意を剥き出しにします。そんな彼らの戦いの横で、家族たちはまた、それぞれの想いで彼を見つめています。

モトクロスレース中の事故で障害を負ったばかりのキースは、自分の体のこと、ガールフレンドとの関係など、将来に大きな不安を抱えた不安定な状態でした。徐々に進むリハビリの中、彼は車椅子ラグビーの紹介に施設を訪れていたズパンと出会います。

彼らのそれぞれの戦いが、どのように進み、どんな結末(映画中でのひとまずの、ですが)が待っているのかは、興味がわけば是非、映画を観て確認してみてください。

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男たちのその後

さて、最後に、映画後の彼らを少し追ってみます。出来ればここからは、(これから観るつもりの方は)先に映画を観てから読まれた方が良いかと思います。

ズパンは、映画中にあった04年パラリンピックの雪辱を4年後の北京で晴らし、見事に金メダルを獲得しました。一方で広報担当として対外的なメディアへの露出も精力的にこなし、バラエティやドラマなども含めたTV出演も数多くあるようです。彼はあるインタビューで「もし、事故の前に戻れるならば、戻りたいか?」と尋ねられ、次のように答えています。

「いいや、そうは思わないね。あの事故は、それまでの自分には無かった機会、経験、友情へと導いてくれたんだ。そして、自分自身について教えてもくれた。そう思えば、あれは自分の身に起こった最良のことだったよ。」

ソアーズは、ラストシーンにあったように05年にカナダの監督ではなくなりました。しかしそれは解任ではなく、契約満了であったようです。契約が更新されなかったのがカナダチーム側の拒否なのか、彼がそれを望まなかったからなのかは定かでありません。いずれにしろ彼はその後、一度背を向けた米国コーチに応募しました。しかし、またしてもこれは叶わず、彼は再び米国を後にします。次に彼は英国に渡り、欧州チャンピオンであるナショナルチームのテクニカルコーチに就任。2008年まで勤めました。現在の彼は、ドイツ代表を率いています。

そしてキース。彼は映画に登場していたガールフレンド Coppa と別れたとのことです。恋人というより看護婦のようになってしまった関係に彼女が希望を見出せず、また、彼女の父親が癌を患ったことで精神的にも疲れてしまったことを、しかし彼女はなかなか告げることが出来ずにいました。常に陰鬱で感情の起伏が激しくなってしまったキースに、辛い別れを告げることがためらわれたからです。そんな折、映画にあったキースとマーダーボールとの出会いがありました。「あれは大きな転機だった」とキースが語るように、彼は事故後はじめて前向きな希望を持ち、自信に溢れた様子を見せたといいます。そしてそれは皮肉にも、彼女が待っていた別れを切り出せるタイミングでもありました。その時は狼狽し、怒りをあらわにしたというキースですが、07年に受けたインタビューでは「彼女の健康と幸せを祈っている」と語っています。Coppa は現在ではフリーライターとして活躍し、母親にもなりました。一方のキースは新たなガールフレンドと出会い、ニューヨーク・ウォリアーズで車椅子ラグビーを続けています。

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-- Posted by nao58

2 Responses Subscribe to comments


  1. 香梓

    タイミングよく(?)
    メキシコで14日から18日まで
    車椅子ラグビー米大陸選手権が
    開催されるそうです。
    参加国はブラジル、カナダ、
    コロンビア、米国、メキシコ。
    開幕戦はコロンビア対米国。
    かなりハイレベルな大会で、
    見応えは期待できるそう。
    国内放映はともかく、
    ストリーミングでもあれば…ですね。
    ソース:ラグビータイム(スペイン語)

    8月 11, 2010 @ 10:21 PM


  2. nao58

    情報ありがとうございます。
    ストリーミング…無いでしょうね^^;
    国内でもそれなりのペースでやってるようですし、一度生で観てみたいなと思ってます。

    8月 11, 2010 @ 11:48 PM

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